蒸気機関車が大好きだ。煙をもくもく吐いて白い蒸気を出し、大きな汽笛を鳴らしながら走りすぎるその姿には、酔いしれて感動すら覚えてしまう。まあ一種の中毒であろうが、心地よいことばかりではない現世にあって、陶酔できる対象があるのは幸せなことだろうと思う。生まれ育った名古屋付近でも、子供の頃は中央西線のD51や関西本線・参宮線のC57など、待ち構えていなくともちょくちょく目にすることができたのだった。ところが物心ついて行動範囲が広かった頃には、蒸気機関車は過去のものになりつつあった。北海道や九州の辺鄙なローカル線を訪ねなくては、蒸気機関車の雄姿は拝めなくなっていた。そして一九七五年を最後に、日本の国鉄線上から蒸気機関車は消えてしまったのである。静岡県の大井川鉄道で蒸気機関車の復活運転が行われていたものの、いわゆる大型の蒸気機関車が架線のない路線を走る自然な姿はもう永遠に見られないと諦めかけていた。